こねて食べる!パスタと器のワークショップ @ トラットリア NATIVO
トラットリア「ナティーボ」と共同主宰で開催した「パスタとうつわの教室」。
ともに「こねる」ことからはじまるパスタと陶芸。それぞれを、作って、使って、味わおうというレッスンには、お料理上手でうつわ好きのお客様がたくさん参加してくださいました。ありがとうございます。
今回、ナティーボの瀧本シェフに教わったのは、粉と水、ほんの少しの塩とオリーブオイルだけを使った究極にシンプルなパスタ。イタリアのパスタは中世に生まれたといわれていますが、それはまさにこの日のメニューと同じ、小麦粉と水だけをこねて、ゆで、チーズをかけたものだったそう。パスタは貧乏人でもお腹を満たせる大事な栄養源でした。そんな「貧乏人のパスタ」を、「いま考えうる最高級の食材で、手間ひまかけて作りましょう」という瀧本シェフ。シンプルの中にある豊かさを味わって欲しいというNATIVOらしいメッセージが伝わってきました。
イタリアンシェフと陶芸家が一緒になって、
こねる、の時間
イタリア料理店での料理教室で嬉しいのは、本場の材料を試すことができること。この日使った材料は、ピエモンテ州の小さな村から届くオーガニックな小麦粉。昔ながらの石臼挽きで、手間をかけて製粉された味わい深い逸品でした。そこに塩とシチリア産のオリーブオイル、最小限の水だけを加え、全体に水分を行き渡らせるようにこねる。するとほんとにほんとに少しずつですが、生地がまとまっていきます。と同時に弾力も増していき……。パスタの生地は、ほんのすこしの水分を全体にまんべんなく行き渡らせるようにこねるのが理想的。一方、陶芸の粘土は、土に含まれた空気を外へ外へと逃がしていくこね方です。土を練るのが本業の今井さんは、「生地の触り心地もこね方も、陶芸とは勝手が違う」と驚いていましたが、小麦粉と土と素材こそ違うけれど、パスタも陶器も自然の恵みに人間が手を加え、火の力を借りることで美味しい時間を彩るものとなります。そう考えると、結局、食事もうつわも根っこは同じ。私たちの食卓ってなんて幸せなんでしょう。
うつわによって料理をより楽しんでいただくために、瀧本シェフは、今井さんのうつわの形状をよく観察して、作るパスタを決めました。1日目に登場した限りなく平らなオーバルフラット皿には、フォークにくるくると絡めて食べるトスカーナのロングパスタ「ピチ」。2日目のオーバルクープ皿は、少し深さがある上に、その深さを作る見込みのエッジが垂直になっていることから、スプーンですくいやすいと判断。ソースと絡めながら食べられるショートパスタ「ガヴァテッリ」をチョイスしました。小さく切った「ピチ」の生地は、指の腹を使って細長いひも状に伸ばしていきますが、この作業が思いのほか難しく、参加した皆さんそれぞれに、なんとも表情のある個性豊かなパスタが生まれました。一方の「ガヴァテッリ」は、大きさが不揃いなことがかえって楽しいパスタでした。粉の状態から手間をかけてできた生パスタのゆで時間はたった3分。合わせるのは、手摘みの有機トマトを煮詰めただけのポマローラソースです。
手作りのオーバル皿だからできる
美しさと使いやすさへの配慮
この日使った今井さんのオーバルフラット皿は、トマトソースの赤色と相まってクリスマス気分をも盛り上げるグリーン(緑釉)。加えて、白、深いブラウン(飴釉)でした。グリーンとブラウンは、今井さんが住み、作陶をしている陶産地・益子の伝統釉です。とくにグリーンは、料理が映える緑色にとことんこだわったので、粘土をオーバル型に成形し素焼きしたあと、白い化粧土をかけてもう一度焼成しました。こうして下地を白にするひと手間をかけたことで、緑釉独特の深みと軽やかな透明感が同居する、なんともモダンなお皿に仕上がったのだと思います。
オーバルフラット皿は、リムと見込みに極力段差がないので、板皿のように使ってフォーマルな雰囲気を作ることもできる一方、オーバルクープ皿は、見込みに深さがあるのでパーティに最適な煮込み料理にも重宝します。ふだん使いとハレのテーブル、どちらにも使えるお皿だなあと感心しつつ、お皿をテーブルに並べているうちに、あっという間にパスタがゆであがりました。
ゆであがったパスタは、もっちもち。噛めば噛むほど素材の旨味を感じられました。ソースがトマトだけを使ったシンプルなものだったことも、これほどまでに小麦粉の旨みを味わえた理由のひとつでしょう。
陶芸家が提案するひと皿を前に、シェフはどういうひと品を導き出し、お客様はその料理を作ることにどんなひと手間をかけるのだろう。
わくわくしながらのぞんだワークショップは、作る人と、食べて使う人が、同じ作業を共有しながらテーブルを囲むことで、お互いを気にかけ、料理について、うつわについて、それぞれの想いや知識を分け合う濃密な時間となりました。
自分の中に和食器、洋食器の垣根はないと言い切る今井律湖さん。これからも、料理好きがつい使いたくなってしまううつわを作ってくれることでしょう。
ライターとして、ナビゲーターとして、使い手として、作り手のサポーターとして、いまこの国で生まれているうつわにかかわれる幸せを噛み締めた二日間でした。みなさま、ありがとうございました。
photo by HAL
special thanks to Ristuko Imai, Trattoria NATIVO
(初出 Instagram @enasaiko / December,2018)
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