ミナ ペルホネンのこと

 

これから100年どうするの?

mina perhonenの

いまとこれから

 

ミナ・ペルホネンのデザイナー、皆川明さんは、
いろいろな場面で「百年以上続くブランドを作りたい」と語ってきた。
そこで、今回、こうたずねてみた。

 

「百年後のミナ・ペルホネンに、聞きたいことは、何ですか?」

 

すると、皆川さんは、すこしも考え込むことなくこう書き記した。

 

「これから100年どうするの?」

 

この言葉を聞いて、隣りにいたミナ ペルホネンのスタッフは思わず笑顔に。ブランドの創始者が、最初の100年どころか、その先の100まで考えて、クリエイションをしているという事実は、関わるすべての人にとって嬉しいことに違いない。

皆川さんは言う。「20年前に『ミナ』をはじめた頃は、デザインから縫製まですべてを一人でやっていました。挑戦したいことやアイディアは次々とあふれてきますが、僕一人の一生でできることには限りがあります。そこで、100年続くブランドを育てるという考え方に変えてみたら、可能性が無限に広がりました。100年のうちの最初の20〜30年を自分の時代と考えれば、自ずと、いま何をするべきかということが見えてきて、何事においても躊躇することがなくなりました」

学生時代は、陸上選手として活躍していたという皆川さんは、怪我を理由に引退を余儀なくされたことから“終わりのない一生の仕事”というものについて思いめぐらすようになる。そんな折、ふらりと出かけた旅先のパリで、コレクションのアルバイトをする機会に恵まれ、いきなり最先端のモードに触れた。その経緯がデザイナーを志すきっかけとなった。

「アルバイトの簡単な作業でも、僕は、あまり上手にできなかったんです。そのときに、得意なものよりも、できないからできるようになりたいと思ってする仕事のほうが、飽きずに一生続けていけるんじゃないかと思いました」

時間をかけてクリエイションすること。どんなことにも理念をもって取り組むこと、そういった姿勢は、このときにもう芽生えていたのだろう。それが、今日の確固たるスタイルを支え、洋服だけでなく家具やプロダクトといったさまざまな展開にもつながっている。

「服、家具、プロダクトの間に、垣根はないと考えています。デザインを施す対象が、糸ではなく、他の材料に変わるということだと思います。ただ、洋服と同じように、使う人にわくわくするような高揚感をもたらすものをつくることを大事にしています。機能性を重視したプロダクトであっても、デザインを通して、そこに感情をのせることができるんです。デザインには、当たり前のように社会の中にあったものへの新しい視点という“気づき”を促し、人に語りかける、大きな役割があると思っています」

感情と結びつきながら、人々を魅了してきたミナ ペルホネン。この先の未来はどうなっていくのだろうか。

「会社というのは個人の能力に頼るのではなくて、ブランドの中に積み重なった理念に共感して、ものづくりを継続していくというのが理想だと思います。今から、社内に限ることなく、その理念に共感してくれる世界のクリエーターや職人とのコミュニケーションを交わし、一緒に何かを生みだしながら、ミナ ペルホネンが発するアイディアから世界中のものづくりの現場がつながっていけるようになれたら嬉しいですね」

ミナ ペルホネンの理想が現実となる未来。人々の暮らしは、きっと、ものすごく豊かだ。

 

みながわ・あきら

パリでファッションに出合い、縫製工場勤務を経て、1995年「特別な日常着」をコンセプトにテキスタイルからデザインする服、ミナをスタート。03年、ミナ ペルホネンに改名。

 

(初出「minä perhonen デザイナー 皆川明 ロングインタビュー」Discover Japan / January,2015 )